1. はじめに
博物館は、文化や歴史、自然科学を学び、楽しむための貴重な場です。
また、近年では施設の魅力を維持しつつ、新しい集客施策を模索する博物館が増加しています。
特にインバウンド観光客の誘致や来館者の興味喚起、満足度向上のための工夫が求められています。
本記事では、美術館や水族館などの博物館の種類を整理しながら、集客課題や成功事例、
さらに有効なツールについて詳しく解説します。
2.博物館とは?まずは種類を確認
博物館にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる魅力や目的があります。
以下に主要な分類を紹介します。
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- Ⅰ. 博物館
歴史博物館や科学博物館など、教育的要素の強い施設が多く含まれます。
歴史博物館
地域や国の歴史を展示し、過去を学ぶ機会を提供します。国立歴史民俗博物館はその代表例です。
科学博物館
子どもから大人まで楽しめる科学技術や自然科学の展示を行う、国立科学博物館がその代表例です。
産業博物館
自動車や鉄道など特定の産業に焦点を当てた展示を楽しめます。
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- Ⅱ. 美術館
美術館は、芸術作品を中心に収集・展示する施設です。
近代美術館
現代アートを中心に展示し、東京都現代美術館などが挙げられます。
専門美術館
特定のアーティストやテーマに焦点を当てた展示を行います。
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- Ⅲ. 水族館
水族館は、生きた水生生物を展示する施設です。
大型水族館
ショーや広大な水槽展示が行われます。
地域密着型水族館
地元の海洋生物を紹介し、地域の自然環境を学べる場を提供します。
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- Ⅳ.動物園
動物の生態や保護活動を教育する場です。
サファリパーク
車やバスで園内を巡り、動物が自由に動き回る様子を観察します。
自然に近い環境で動物を観察できます。
自然動物園
動物の自然環境を模倣した展示です。
動物の行動や生態を学ぶことが目的です。
テーマ型動物園
特定のテーマや地域に特化しています(例: アフリカ動物、海洋生物)。
特定の環境と文化について深く知ることができます。
ふれあい動物園
小型の動物と直接ふれあうことができます。
家族向けのレクリエーションの一つでもあります。
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- Ⅴ.植物園・庭園博物館
植物や歴史的庭園をテーマにした施設です。
- Ⅵ. その他の施設
民俗資料館
地域の伝統や民俗文化を紹介しています。
記念館
偉人や歴史的出来事を記念する施設です(例:渋沢栄一記念館、岡本太郎記念館)。
特別博物館
文化財や自然資源に関する資料を展示する専門性の高い施設や展示企画です。
3.博物館の集客における課題
博物館の集客には多くの課題があります。
- Ⅰ. 集客ターゲットの絞り込み
博物館の来館者は子ども連れや観光客など多岐にわたります。
それぞれに対応する施策を展開するのは容易ではありません。
- Ⅱ. デジタル技術への対応不足
来館者はスマートフォンやデジタルコンテンツを求めていますが、
それに対応したサービスを提供している施設はまだ少ないのが現状です。
- Ⅲ. イベントのマンネリ化
特別展示やワークショップの内容が過去の企画と類似している場合、リピーターの関心を引き続けるのが難しくなります。
4. 博物館で行われる集客イベントの種類
博物館は、ユニークな集客イベントを通じて訪問者を引きつけます。
- Ⅰ. 特別展示
話題性のあるテーマや季節限定の展示を通じて新規来館者を呼び込みます。
また、一定期間でテーマを変えることでリピーターにも訴えかけます。
- Ⅱ. ワークショップ
親子連れや若者を対象に、体験型の学びを提供します。
ワークショップで体験したものはお土産として持ち帰ることもできます。
- Ⅲ. スタンプラリー
館内の回遊を促進する手法として、スタンプラリーは効果的です。
スタンプを一定個数以上もしくは全て集めると、オリジナルグッズと交換ができます。
- Ⅳ. デジタル抽選会
スマートフォンを活用した抽選イベントは、手軽さが魅力です。
- Ⅴ. 謎解きイベント
館内で謎解きをしながら展示を巡るイベントは、家族連れや若年層に人気です。
- Ⅵ. ナイトミュージアム
夜間の特別営業で、新たな体験を提供するイベントです。
暗闇を活用した展示は、来館者に特別な体験を提供します。
- Ⅶ.ボランティアガイド
ボランティアガイドの方が展示物を案内することで、より深く展示物について知ることができます。
5.博物館の集客イベント事例
- Ⅰ. 大阪府 梅田スカイビル 「天空美術館」
企画の概要
・展示会でお客様の感想や反応を収集する手段がなく困っていた。
・紙のアンケートでは記入スペースが不足。
・会場の構造上、入口と出口が同じで混雑の懸念があった。
・会場を繋ぐ広場でスタッフがQRコード付きの紙を配布しながら声かけ。
・回答者にはデジタルガチャを提供し、1等~3等のプレゼントを用意。
・紙のアンケートを用意せず、スマートフォンを持っていない来場者には美術館のiPadを利用して回答を促進。
結果
・来場者の7割がアンケートに回答。
・アンケート内容には来場のきっかけや感想を聞く項目を用意。
・プレゼント効果で自由記述欄に多くのコメントが寄せられた。
・回答者のスマートフォンが使えない場合でもスムーズな対応を実現。
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- Ⅱ.東京都「ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション」
企画の概要
・ヤマサ醤油株式会社が開設した銅版画家・浜口陽三氏の美術館にて実施。
・スマホ専用サイトがなく、WEB制作業者に見積もりを依頼するも高額かつ工数が多く困っていた。
・信頼できる業者にスマホサイト制作を依頼。
結果
・チラシの閲覧状況を把握できるように、1週間ごとに閲覧レポートを業者から提出してもらった。
・今回の展示(ブルーノ・マトン氏)に関連し、海外(ベルリン)からのアクセスも確認。
・チラシの効果測定が初めて可能になった。
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- Ⅲ.京都府「京都国立博物館」
企画の概要
・屋内展示2箇所の来館者が中庭の展示に気づかず帰ってしまう問題。
・デジタルスタンプラリー企画を実施。
・QRコードで来館者を特定の場所へ誘導できる企画にした。
・デジタル方式のため、台紙やスタンプ台、消毒液が不要で運用が簡便。
結果
・企画の初回の話し合いから実施まで約2ヶ月で実現。
・屋内展示から中庭展示への来館者誘導という課題解決を実現。
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- Ⅳ.大阪府「天王寺動物園」
企画の概要
・天王寺動物園内で開催された「SDGzoo®」イベントでクイズスタンプラリーを実施。
・以前利用していたARスタンプラリーは「アプリが必要」「文字数制限」など課題があり、自由度が低かった。
・アプリが不要で文字数制限が無いシステムを利用し、企画を実施した。
・動物園内に17箇所(2箇所の入り口を含む)QRを配置。
・QRを読み取りクイズに回答。
・正解するとスタンプが貯まり、5問以上正解で応募フォームへ進む仕組み。
・クイズの正答率や設置場所ごとのログ情報を収集。
・不正解時に問題へ戻るボタンを設置し、リトライしやすい設計を実現。
結果
・約3週間のイベント期間で10,598人が参加。
・動物ごとの人気により回答率の差が出る傾向が判明。
・高回答率の場所への告知物配置など、今後の改善案が得られた。
・応募者の63%が自由記述で感想や意見を送信。
・クイズやSDGsへの取り組みへのポジティブな感想が多く、好評を得た。
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- Ⅴ.東京都「東京都写真美術館」
企画の概要
・館内を巡るデジタルスタンプラリー企画を実施。
・館内の回遊性を向上させるために、美術展以外の館内施設(カフェやショップ)にもスタンプスポットを配置。
・オリジナルキャラクターのスタンプカードデザインを、イラストレーターに依頼し作成。
・ハンディキャップのある方が利用しやすいよう、キャンペーンページは全てテキストベースで作成することで、
スマートフォンの音声読み上げ機能に対応。
結果
・館内全体を楽しむ仕組みを提供しつつ、デザインやアクセシビリティに配慮したスタンプラリーを実現。
・館内の回遊性向上に成功。
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6.集客のためのポイント
博物館が集客を実施するにあたり、ポイントとなることがいくつかあります。
- Ⅰ. デジタル技術の活用
スマートフォン対応のスタンプラリーやデジタル抽選会、クイズイベントは、参加者に楽しんでもらいながら、
博物館側が誘導したい場所に誘導できる施策の一つです。
特にアプリ不要で参加できる仕組みは、参加のハードルを下げ、幅広い層への訴求が可能です。
これにより、施設内を効果的に回遊させることが可能です。
また、来館者の行動ログをデータとして収集できるため、次回以降のイベント設計に活用できます。
- Ⅱ. SNSでの拡散
SNSでのシェアを促す施策は、集客の成功に直結します。
例えば、施設のキャラクターや季節限定デザインを使ったフォトフレームを用意し、
来館者に写真を投稿してもらう仕組みが効果的です。
さらに、専用のハッシュタグを設定することで、投稿を通じて施設の認知度を広げられます。
SNS上でのキャンペーンを行えば、オンライン上でも話題を作ることができます。
- Ⅲ. ターゲットの明確化
来館者の層を具体的に定めることが重要です。
例えば、家族連れをターゲットにする場合は、子ども向けのワークショップや触れ合いイベントを企画します。
一方、観光客を対象とする場合は、地元文化や歴史を体験できる展示や限定お土産の提供が効果的です。
明確なターゲットに基づく施策は、来館者満足度の向上に寄与します。
7. 集客のための注意点
集客を実施するにあたり、いくつか注意点もあります。
- Ⅰ. 情報の分かりやすさ
イベントの内容や参加方法を簡潔に説明することは、スムーズな運営に欠かせません。
特に館内の案内板やウェブサイトでは、直感的に理解できるデザインやレイアウトが求められます。
また、外国人観光客向けに多言語対応の案内を用意することで、インバウンド需要にも対応できます。
- Ⅱ. システムトラブルへの対応
デジタルイベントを実施する際には、技術的なトラブルへの備えが必要です。
例えば、QRコードが読み取れない場合や、インターネット接続が不安定な場合の代替案を事前に用意します。
イベント運営中はサポートスタッフを配置し、迅速に対応できる体制を整えることが重要です。
- Ⅲ. プライバシー保護
来館者データを収集する場合は、適切なプライバシーポリシーを設定し、来館者に明示する必要があります。
また、収集するデータの範囲を必要最小限に留め、不要な情報を取得しないように配慮します。
信頼を得るために、データ管理やセキュリティ対策を徹底することが重要です。
8.博物館の集客に役立つ「キュリア」のご紹介
博物館の集客にはデジタルツールであるキュリアがおすすめです。
キュリアの特徴は以下のとおりです。
- Ⅰ. スマートフォンイベントの柔軟性
キュリアは、水族館や動物園などの博物館でデジタルコンテンツを簡単に作成でき、多くの施設で採用されています。
例えば、来館者がQRコードを使って参加するスタンプラリーや、展示物に関連したクイズを実施することで
来館者の学びにしてもらいます。
これらのイベントは、アプリ不要で利用できるため、参加者への負担が軽減されます。
- Ⅱ. デザインQRの活用
施設のロゴやキャラクターを組み込んだオリジナルデザインのQRコードを作成できます。
この「デザインQR」は、展示物やイベントの魅力を視覚的に引き立てるだけでなく、ブランドの個性を強調するのに最適です。
また、デザイン性の高いQRコードは、多くの来館者の目を引くことでしょう。
- Ⅲ. 効果測定の利便性
キュリアを利用すれば、デジタルイベントの効果測定が簡単に行えます。
例えば、QRコードのスキャン回数や参加者が立ち寄った場所、特定の展示物の人気度などのデータを収集できます。
これらのデータを基に、次回の企画に役立つ分析や改善を行うことが可能です。
結果として、来館者満足度を高めると同時に運営の効率化にもつながります。
- Ⅳ. 外注コスト削減
キュリアを活用することで、外部業者への委託費用を削減できます。
施設スタッフが直接コンテンツを作成・管理できるため、スピーディーかつ低コストで運営が可能です。
また、仕様変更にも即時対応できるため、急な変更や追加にも柔軟に対応できます。
9.まとめ
博物館は、多様な展示やイベントを通じて来館者に学びを提供する重要な施設です。
しかし、集客には工夫が求められます。
本記事で紹介した事例やデジタルツールの活用を参考に、博物館で一歩先を行く集客施策を展開してください。