【印刷会社向け】電通とプリントパックの売上が示す、印刷会社が失ったもの
「最近、既存のお客様が減っている」「印刷物の予算や発注量が少なくなってきた」
このような声を、印刷業界で耳にすることが増えました。
実際に、ある印刷会社の倒産事例から見えてきた業界の変化と、これからの生き残りに必要な視点について詳しく解説します。
岐阜県のとある印刷会社が、つい先日倒産しました。
官公庁や地元企業を中心に受注し、最盛期には年商約3億8千万円を誇っていた会社です。
しかし、ここ数年で売上は1億5千万円まで落ち込み、ついに倒産。
主な原因は「紙の需要の減少」でした。
この事例は決して特殊なケースではありません。
帝国データバンクの調査によると、2024年度の印刷業の倒産件数は95件となり、負債総額は133億8,300万円に達しています。
また、印刷業界の国内市場規模は現在約3兆円ですが、AIによる将来予測では2030年には2.5兆円まで縮小し、約18%の市場が失われると予測されています。
その背景にあるのは、インターネットの普及です。
チラシやはがきなどの紙の販促物が減り、広告費は他業種に流れています。
2024年の日本の総広告費は7兆6,730億円で過去最高を更新しましたが、その内47.6%にあたる3兆6,517億円がインターネット広告に集中。
前年比109.6%と大幅な成長を見せています。
かつて印刷会社が担っていた販促の仕事が、いまは広告代理店やネット専門の会社に移っているのです。
従来のLP(ランディングページ)やデジタルスタンプラリーといったデジタル施策への移行が加速していることも、この変化を後押ししています
その変化は、数字にもはっきりと表れています。
広告大手の電通は、デジタル広告分野での売上総利益が過去最高を記録するなど、上流の企画・戦略の仕事を獲得し続けています。
2024年のデジタル広告市場は前年比10.7%の大幅成長を遂げました。
一方、ネット印刷大手のプリントパックも着実な成長を続けており、2021年の297億円から2024年には422億円と約1.4倍に拡大。
価格を武器に、大量受注する企業に下流の印刷の仕事が流れています。
ネット印刷市場全体を見ると、2023年時点で約800億円規模に達し、これは10年前と比較して約3倍の成長です。
2022年には前年比8%増の1,340億円となる見込みで、市場の急速な拡大が続いています。
つまり今、従来の印刷会社は、上流の企画の仕事も、下流の印刷の仕事も、他業種に奪われつつあるのです。
この「挟み撃ち」状況が、多くの印刷会社を苦境に追い込んでいます。
印刷業界の課題は市場縮小だけではありません。
技術力が高い社員の高齢化が進み、若年層への技術継承が大きな課題となっています。
2025年9月の統計では、「人手不足」が一因となった倒産が月間最多の46件を記録し、前年同月比109.0%増となりました。
印刷業界も例外ではなく、熟練した人材の確保と定着が深刻な問題となっています。
円安やウクライナ情勢による紙や光熱費の高騰、コロナ関連支援の効果が薄れたことによる資金繰りの厳しさなど、複数の要因が同時に経営を圧迫しています。
これらの構造的な問題が重なり合い、業界全体の体力を大幅に削いでいるのが現状です。
では、印刷会社はどう生き残ればよいのでしょうか。
そのひとつの答えが、「付加価値をつくること」です。
ただの印刷受注ではなく、自分たちの手で新たな価値を加えることが求められています。
注目すべきは、印刷業界全体が縮小する中でも、デジタル印刷市場は着実な成長を続けていることです。
日本のデジタル印刷市場規模は2024年に14億米ドルに達し、2033年までに25億米ドルまで成長すると予測されています。
年平均成長率は約8%と、従来の印刷市場とは対照的な成長を見せています。
そこで注目されているのが「ノーコード」という仕組みです。
専門知識がなくても、業務の効率化や自動化ができるのが特長です。
ノーコードは、人手不足や採用の難しさをカバーし、「今いる社員の力を高める」ことができます。
例えば、デジタル抽選システムやフォーム作成、デジタルスタンプカードといったコンテンツを、簡単に提案・作成できるようになります。
すでにこの仕組みを取り入れ、成果を出している印刷会社もあります。
その一社が、栃木県宇都宮市の株式会社みやもと様です。
企画から印刷まで一貫対応されているみやもと様は、ノーコードツール「キュリア」を導入し、業務の効率化を実現されました。
キュリアは、プログラミング知識が一切不要で、誰でも簡単にスマートフォン向けのインタラクティブコンテンツを作成できるノーコードツールです。
クラウド型サービスであるため、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでもコンテンツの作成・管理が可能です。
印刷会社にとって特に重要なのは、従来の紙媒体と組み合わせてデジタル体験を提供できることです。
これらすべてのテンプレートが作り放題で利用できるため、キャンペーンやイベントの規模や予算に関係なく、様々なアイデアを形にすることができます。
キュリアの最大の特徴のひとつが、「背景画像が設定可能なQRコード」であるデザインQRです。
通常のQRコードは白黒の単調なデザインですが、デザインQRでは好きな画像を背景に設定できます。
同じことをデザインソフトで作ろうと思っても、QRコードが読み込めなくなってしまうため実現不可能ですが、キュリアでは読み取り精度を保ちながら美しいデザインを実現しています。
従来の印刷物だけでなく、デジタル体験と組み合わせた提案ができるようになります。
例えば、チラシにデザインQRを組み込み、読み取った人だけがアクセスできるデジタル抽選を実施することで、紙とデジタルの相乗効果を生み出せます。
これまで外部に依頼していたWEBコンテンツ制作を内製化できるため、大幅なコスト削減が実現できます。
また、クライアントからの仕様変更要望にも即座に対応可能で、従来のWEB制作会社では時間がかかっていた修正作業も、リアルタイムで実行できます。
キュリアを活用することで、印刷会社は以下のような新しいサービスを提供できるようになります:
栃木県宇都宮市の株式会社みやもと様では、キュリア導入により以下の成果を実現されています:
印刷業界を取り巻く環境は確かに厳しいものがあります。
しかし、デジタル化の波を脅威ではなく機会として捉えることで、新たな可能性が見えてきます。
キュリアのようなノーコードツールを活用することで、印刷会社は従来の強みである「モノづくり」の精神を活かしながら、デジタル領域でも価値を提供できるようになります。
単なる印刷の発注者と受注者の関係から、課題解決のパートナーとしての関係性へ。
顧客エンゲージメントを高める施策や、UGCを活用した広告など、新しいマーケティング手法を提案できる企業が求められています。
従来の徒弟制度だけに頼らず、デジタルツールを活用した効率的な技術継承や人材育成が必要です。
キュリアのようなノーコードツールの導入により、熟練技術者でなくても高品質なデジタルコンテンツを制作できる環境を整えることで、人手不足の課題を解決する道筋が見えてきます。
印刷業界の変化は止まりません。
市場規模の縮小、人手不足、高齢化といった課題は深刻ですが、その変化に適応し、新たな価値を創造していく企業こそが、これからの時代を生き抜いていけるのです。
キュリアのようなツールを活用して、アナログとデジタルの使い分けを理解し、それぞれの特性を活かした提案ができる企業が、この困難な時代を乗り越える鍵を握っています。
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